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2024

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2024.05.13

モノマテリアル化を可能とするPPS GF40%新グレード ~耐衝撃改質剤を使わずにヒートショック対策が可能に~

ポリプラスチックスはモノマテリアル※1化に貢献でき、かつ耐ヒートショック性を飛躍的に高めたDURAFIDE PPS 1140HS6を開発しました。本グレードは材料設計を工夫することでISO表記をPPS世界標準の>PPS-GF40<としたまま耐ヒートショック性能を向上、機械的物性やその他基本物性を維持しています。PCR2時には、市場で使用されるその他多くのPPS部品と分別不要で、回収・リサイクルが可能です。

※1 モノマテリアル(mono-material):一般的には製品を構成する材料が単一であることを指すが、当社はモノマテリアル化の目的のひとつに“リサイクル回収性を考慮し、単一樹脂・あるいは汎用的な組成を有するグレードを広く使用することで、分別回収性を向上させる”ことも含むと考えている。PPSの場合、PPS GF40%が射出成形用途で広く採用されているため、本稿ではGF40%かつ耐衝撃改質剤を使用しない本材料は、一般的なPPS GF40%と同等組成であり、モノマテリアルに含まれると定義した。

※2 Post-consumer recycle (ポストコンシューマーリサイクル):市場で使用済みの製品を回収してリサイクルすること。

 

 

モノマテリアル化と耐ヒートショック性を両立する新グレード

ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)は耐熱性・機械強度・耐久性に優れることから、高耐熱・高耐久が必要な自動車部品、冷熱水衝撃のある水廻り部品、SMT※3耐熱の必要なコネクターなどに多く採用される高機能樹脂です。また、PPSはガラス繊維等の無機強化材や各種添加材との親和性が良好なため、各用途に応じて様々な成分を含む多くのグレードが市場で使用されています。一方、地球環境問題の観点から樹脂材料のリサイクルが喫緊の課題となっており、そのための一つのソリューションとして適用材料のモノマテリアル化を進める動きが既に始まっています。当社はそれらの課題を解決する新グレード、DURAFIDE PPS 1140HS6を開発しました。

※3 Surface Mount Technology (表面実装技術)

 

耐衝撃改質剤を加えずに性能改善することで成形不良対策も可能

近年PPSは自動車用途において、特に電動自動車(xEV)比率の増大に伴いバスバーと呼ばれる部品への需要が高まっています。バスバーはxEVに搭載されるモーター、パワーコントロールユニット、リチウムイオンバッテリー等の各種電装部品における高圧大電流を流す部品であり、電流が流れる銅等の金属部とこれを絶縁被覆する樹脂部で構成され、一般的には金属と樹脂を射出成形で一体化させるインサート成形により製造されます。

バスバー部品に代表される金属インサート部品は、急激な温度変化で冷熱を繰り返すと樹脂と金属との線膨張差で生じるひずみで破壊するため(図1)、耐ヒートショック性(耐冷熱衝撃性)が要求されます。

 

図1 耐ヒートショックメカニズムイメージ図

 

PPSは耐ヒートショック性に優れるエンジニアリングプラスチックですが、xEV部品はインサート部品の形状が複雑であり、ヒートショックによりクラックが入りやすくなることがあります。特に高圧大電流を扱うxEVの基幹部品の破壊は絶縁不良に直結する極めて重要な課題でした。一般的にはPPSに耐衝撃改質剤を加える手法が用いられますが、材料強度が損なわれたり成形時のガスやモールドデポジットが発生しやすくなる等のデメリットがあります。また、耐衝撃改質剤を加えた材料はマテリアルリサイクル※4のトレンドにも合致しません。

※4 マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル Mechanical Recycling):使用済みの製品を性質を変えずに再利用すること。例として、金属や廃プラスチックを溶かして新しい製品に再加工すること等がある。

 

新グレードDURAFIDE PPS 1140HS6の特徴

本グレードは、PPS標準のGF40%材料でありながら耐ヒートショック性に優れ、PCR時にその他多くのPPS部品と分別することなく回収可能です。主として成形時の残留ひずみの低減や線膨張の均質化による内部ひずみの低減により耐ヒートショック性能を担保する材料設計を当社で初めて採用し、耐ヒートショック性能の向上と機械的物性、その他の基本特性の維持を実現しています(表1、図2)。

 

図2 DURAFIDE PPS 1140HS6と現行GF40%グレードの耐ヒートショック性

 

表1 DURAFIDE PPS 1140HS6とその他グレードの物性一覧

 

更に、射出成形時において標準材以上の流動性を発現しており、薄肉製品や大型製品の成形に好適です。

 

以上のように、今回開発したDURAFIDE 1140HS6は、xEV周辺部品のみならず金属インサート部品の絶縁材料全般において、性能および環境の観点から好適な次世代PPS樹脂となることが期待されます。

当社では、本材料に留まらず今後も環境ニーズにマッチした高機能材料の開発を目指します。

 

 

 

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