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2023

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2023.11.06

電気自動車(BEV)のサーマルマネジメント:POMと長繊維強化PPが新たな選択肢となる理由

地球環境問題を背景としてエンジン車から電気自動車(BEV: Battery Electric Vehicle)へのシフトが加速しています。BEVの熱の管理(サーマルマネージメント1)は、走行距離(電費)やリチウムイオンバッテリー(LIB: Li-ion battery)の性能・耐久性への影響が大きいため、非常に重要視されています。このBEVのサーマルマネージメントに使用される部品に対し、最適な材料をご紹介します。

1 サーマルマネージメント:車両の各システムの温度をモニタリングし、最適な温度に維持できるよう管理すること。システムごとにファン、冷却水、冷却オイル、エアコン用冷媒などで冷却されている。

 

 

BEVのサーマルマネージメントシステムの変化

BEVでは熱を効率よく使うため、モータからの排熱の利用やエアコンシステムを部品冷却に使用するなど、車両全体の統合サーマルマネージメントシステムの採用が進んでいます。このシステムを構成する部品にはBEV専用品が採用されています。

自動車の冷却にはエチレングリコールを主成分とする冷却水(LLC: Long Life Coolant)が使用されています。エンジン車のLLCは通常時70100℃、オーバーヒート時は120℃以上になるため、冷却水用の部品や配管などには金属やPPS(ポリフェニレンスルファイド)などの高耐熱樹脂が用いられていました。一方、熱源となるエンジンが無いBEVは要求されるLLC温度が100℃以下となります。そのため、BEV専用の部品にはより耐熱性の低い材料が選択できるようになります。

 

樹脂の分類と耐熱性

 

BEVの冷却部品向けの材料紹介

120℃以上の高温LLCが接触する部品には、金属もしくは150℃以上の耐熱性を持つスーパーエンジニアリングプラスチックのPPSなどが使用されています。一方、LLC温度が100℃以下の環境下であれば、汎用エンジニアリングプラチックのPOM(ポリアセタール)などが使用可能となります。汎用樹脂のPP(ポリプロピレン)を使用検討する場合は、強度及び寸法精度を高めるため、短繊維ではなく長繊維のガラスで強化したPP-LGF(LGF: long-glass fiber)を使用することを推奨します。PPSなどの高耐熱樹脂からPOM やPPに置き換えることで材料コスト削減だけでなく、材料のカーボンフットプリントの低減や成形時のエネルギー削減などCO2削減活動にも貢献します。

 

樹脂の特徴と推奨グレード

 

長年の経験と実績とともに、CAEによる設計サポートが可能

温度耐熱性の低い材料への置き換えは長期での耐久性が課題に挙がります。ポリプラスチックスでは数時間以上のLLCへの浸漬試験を実施しており、各樹脂のデータを保有しております。またこれらのデータを活用したCAEによる設計サポートも可能です。

 

環境ニーズに対応

当社ではバイオマスを活用したDURACONbG-POM※2もご用意しており、材料の環境対応もご検討いただけます。

※2 ISCC Plus認証に従い、バイオマス原料から製造されるメタノールを活用した製品です。
詳細は当社Webサイトをご参照ください。
https://www.polycsr.com/jp/highlight/2021_01.html

 

ダウンロード資料では各樹脂の耐久性についても詳しくご紹介しています。ご相談・ご要望等ありましたら弊社の営業担当、もしくは画面右上の「お問合わせ」からお問い合わせください。

 

 

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