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2024.10.03

炎(Flame)が出ない、煙(Smoke)が出ない、毒性ガス(Toxicity)を発生しない、全く新しい航空機内装向けコンポジット部品用コア材 ロハフォーム(ROHAFOAM®)日本上市

ポリプラ・エボニック株式会社

ロハフォーム

【背景】

航空機の部材には、⽶国のFederal Aviation Administration(航空宇宙局/FAA)が定めた規則であるFAR 25.853*1に基づき、⽤途に応じた燃焼試験FST(Flammability難燃/Smoke発煙/Toxicity毒性)が要求されます。この規則は北⽶以外の地域でもそのまま採り⼊れられているため、航空機業界でのビジネスにおいては、⽇本を含め世界中で避けて通れない要求事項となっています。その上で、航空機は燃料消費を抑える、排出CO2を削減するため、機体は十分な強度を持たせながらできるだけ軽量化することが求められています。

機内にはファースト、ビジネス、プレミアム、エコノミーの座席、ギャレー(食事準備の場所)やラバトリー(洗面所)、機内の荷物入れ(オーバーヘッドビン)、機内壁、窓ガラスとその枠組みなど、多くの金属及びプラスチックで作られた部品が備え付けられています。機内で使用可能な材料は、FSTすなわち仮に材料に着火しても、すぐに鎮火し、炎(Flame)が出ない、煙(Smoke)が出ない、毒性ガス(Toxicity)を発生しないという点が非常に重要である。なぜなら空中では搭乗客は逃げ場がないからです。

昨今の機体ではカーボンコンポジットの使用が増加し、機内の設備での軽量化も大きなテーマの一つです。軽量化には軽量高剛性なコンポジットや、コア材をカーボン繊維やガラス繊維の布地で挟んだサンドイッチ構造がよく使われています。

*1: FAA(Federal Aviation Administration:アメリカ連邦航空局)により発行されたCFR(Code of Federal Regulations:連邦規則集)のタイトル14の一部であるFAR(Federal Aviation Regulation)

【課題】

ハニカムコアが抱える問題の数々…構造部材で使用される発泡コア材ロハセル®はFST規格外・・・

蜂の巣のような六角形や、その他同一の立体図形(セル)を隙間なく並べた構造体のハニカムコアとは、軽量、高強度、高剛性、衝撃吸収性が高く、断熱性能があるなど、優れた性質をもっています。てFST規格に合格するハニカムコアが航空機の内装用コンポジットコア材とし採用されてきました。

しかしながら、この金属箔やアラミド繊維紙で構成されたハニカム構造を内部に持つハニカムパネルは、パネルを成形した時に形状がほぼ決まってしまうといった成形性に課題を抱えています。しかも、部品の曲率に限界があるため複雑な形状に対応するのが難しいとされています。また、側面側の剛性が弱く、スキンの貼られている面内方向と比べて、スキンの側面の面外方向は、薄いコア材のみでは強度が低く、部品最外部の六角柱の空隙を埋めるなどの側面の補強も必要であり重量も増加します。

また、ハニカム構造の場合、六角柱の壁面が薄く、コア材は空洞であるため、締結加工を施すことができません。

加えて、ハニカムコア使用においてよく知られるテレグラフィング効果*2が発生する場合があり、加飾や印刷が必要な場合、スキン面にパテ埋めなどを施し、平らに整える必要があります。このようにハニカムコア材は多くの工程を必要とするため成形コストが高くなる傾向があります。

一方で、圧力隔壁などに使用される発泡コア材に、ロハセル®があります。ロハセル®は航空機、ロケット、レーシングカー、CT機のベッド、スピーカー振動板など、優れたコンポジットコア材として多種にわたる用途に使用されています。ハニカムコアとは異なり、100%独立気泡の構造を持つロハセル®は、どの方向からの力も等しく受け止める等方性な材料です。また、ロハセル®は独立気泡カット表面のクレーター状になった気泡(セル)に熱硬化性樹脂が入り込み、アンカー効果による表皮材との強い密着が実現できます。そして表面のクレーター状の気泡(セル)にのみ熱硬化性樹脂が入り、それよりも内側の気泡(セル)には入り込まないため、熱硬化性樹脂の使用量が少なくて済み、結果として軽量化の実現に貢献しています。このロハセル®は残念ながらアクリル系の発泡体であるためFST規格を通らず、機内の部品の軽量化のためには使用されることはありませんでした。

*2 ハニカムパネル製造時に表面スキンが凸凹になる効果

【解決】

ロハフォームを開発することで、ハニカムコアの難題を解決!

ロハフォームはまったく新しい発泡コア材です。PEI(ポリエーテルイミド)を原料とし、押出成形し、それをカットしたファイバー/ペレットに温度をかけて微発泡させ、その粒子を金型に充填し、金型に熱を加えて粒子を発泡させて部品を作ります。

想定される用途は機内シート(ファースト、ビジネス、プレミアム、エコノミー)、オーバーヘッドビン、ラバトリーの壁、ギャレー、搭乗口周り、パイロットシート、窓枠のパネルなどであり、それ以外にも、UAM(Urban Air Mobility)向けのバッテリケースや内装壁、シートなども考えられます。現在様々なメーカーにおいてロハフォームを使用した製品開発が進んでいます。

 

ロハフォームの特長

他のコア材を使用した最終製品で比較すると、製造コスト(加飾フィルムや塗装も含む)が抑えられるため、安くなることが想定されます。さらに、金型内にインサート部品(ねじ締結のための土台など)をセッティングし、その周りに微発泡粒子を充填後金型を閉じ、熱をかけて発泡部品を製造すると、そのインサート部品は適切な位置に設置されているため、出来上がったコンポジット部品を削ってインサート部品を挿入する工程が不要になります。

ハニカムコアとは異なり、ロハフォームは等方性の性能を示すコア材であるため、薄い部分から厚い部分が連続しているような複雑形状の部品の製造に適しており、その表面の曲率には制限がありません。

さらにロハフォームの表面は非常に平らで、表皮材とよく接着します。そしていわゆるハニカムコア使用においてよく知られるテレグラフィング効果は出現しません。テレグラフィング効果による表面のへこみが無いため、加飾や印刷前にパテ埋めが不要となり、多くの人手による作業、そのための時間や材料を減らすことができます。

実際のところ、ハニカムコアサンドイッチとロハフォームサンドイッチ部品の重量比較は製品形状によるため、難しいのですが、しかしながら、ロハフォームサンドイッチ部品は、ハニカムコアサンドイッチ部品よりも多くの重量を削減できる可能性があります。なぜならハニカムコアで使用される表皮材の接着のためのフィルムや、強度が必要な部分や端部のパテ埋めは不要だからです。

最後に、ロハフォームは熱可塑性の発泡体で、理論的には機械的なリサイクルが可能とされています。そしてそのリサイクル品で作られた発泡部品もFSTの規格に合格する部品です。

以上