取組事例Our Approach
2020
脱臭処理袋付き簡易トイレ「インスタントイレ」にジュラネックス® PBT製のフィルムが採用されています
ホリアキ株式会社
はじめに
防災に対する意識が高まる中で、災害時の非常用トイレの備蓄は緊急課題となっています。包装資材を幅広く展開するホリアキ株式会社が開発販売している簡易トイレ(インスタントイレ)は、災害避難所などでの臭いによる二次災害の心配がないことから、自治体等で取り上げられ注目されています。
ホリアキ株式会社の簡易トイレは、簡単に組み立てる事ができ、しかも臭いのもとをしっかりと遮断することができます。これを可能にしたのが、当社のジュラネックス® PBT(ポリブチレンテレフタレート)製のトイレ処理袋です。
インスタントイレの開発
インスタントイレを開発するきっかけは、熊野古道が世界遺産に登録された際のトイレ不足を解消するためでした。世界遺産内には新しい建築物どころか、穴一つ掘ることも許されないため、新たに常設のトイレを設置することができません。そのため、必要な場所で簡単に組み立てることができ、使用後に持ち運びもできる携帯可能なトイレが必要となったのです。
上記の理由から「簡単」、「軽量」、「清潔」、「頑丈」、「防臭」をキーワードとして開発が進められました。従来も紙段ボール製の簡易トイレはありましたが、組み立てに時間が掛かることが問題でした。そこで、インスタントイレは便座と台座という2つの部品だけで、「簡単」に組み立てることができるようにしました。ポリプロプレン製ハニカム構造の段ボールでできた台座に、同じ素材でできた便座をはめ込むというシンプルな構成です。また、その素材をポリプロプレン(プラスチック)製段ボールにすることで「軽量化」ができました。その重量は750g。軽量で実に簡単な構造ですが、200㎏の体重までを支えることができる「頑丈」な構造です。また、プラスチック製ですので、水洗いもでき「清潔」な状態を保つことができます。
最後の大きな問題は、臭いです。自治体や地域が排泄物を回収するまでには、時間や費用、人手が掛かります。そこで、「防臭」よりさらに臭いの洩れない「断臭」が必要となりました。このような簡易トイレにおいて、臭いが洩れないことは必須条件であり、必要不可欠といってもいいでしょう。そこで注目されたのが、当社のジュラネックスでした。
PBT製処理袋
インスタントイレの実現の決め手となったのが、PBT製の袋です。PBT製のフィルムの袋は単層のインフレーション成形で作られていますが、一般に結晶性樹脂のインフレーション成形は難しいとされています。中でもPBTは溶融すると粘度が低くなるためインフレーション成形は難しく、国内では現在、包装用の各種フィルムの製造・販売会社である関西化学工業のみが製造しています。
PBT製のフィルムの開発の始まりは医療用滅菌袋として170℃、20分の環境下で耐えられる袋が作れないかとのユーザーの要求から始まりました。そこでたどり着いたのが、当社のジュラネックスでした。この袋の開発後、PBT製のフィルムは耐熱性とともに、臭いを遮断する特性が注目されるようになります。
最初にその用途が広がったのはキムチの持ち帰り用の袋でした。漬物樽から出して秤売りを行っているキムチの販売店舗での採用をきっかけに、臭いの出ない袋「臭断袋」として販売されるようになります。そして、この臭いを遮断する特性を活かし、介護施設などでの汚物処理用途にも使用されるようになり、後にインスタントイレでの採用に繋がることになります。
インスタントイレ処理セットとマイバッグ
インスタントイレは、最初に述べたプラスチック段ボールのインスタントイレ本体、インスタントテント、それにPBT製の袋などからなるインスタントイレ処理セットからなります。(処理セットの内容、使用方法は写真で掲載)
ホリアキではこれらの処理セットを「インスタントイレ マイバッグ」として販売しています。マイバッグ大は屋外で使用できるようトイレ本体と処理セット、マイバッグ小は洋式トイレに取り付けて使用する為のもので、トイレ本体は含まれていません。
災害時の簡易トイレとして
優れた性能を持つインスタントイレは、災害時の避難所などで使用する簡易トイレとして、また自治体やマンション、ビルなどで非常用として採用が増えています。
災害時など、なんらかの要因で急に水が使えなくなり、ビル、マンションで断水、取水制限などが起これば、トイレが使えなくなり、フロアの悪臭や、ごみ集積所には汚物が積まれる事になります。このような、トイレにまつわる問題はあちこちにあります。
外袋のジュラネックス製のフィルム袋によって、断臭されるということは、こうした場合の大きなメリットとなります。インスタントイレのような安心して使える簡易トイレがあるということは、日常生活の安全のために欠くことのできないものとなりそうです。
最後に
ジュラネックス製のフィルムの特徴は臭いを遮断できること、170℃の耐熱性を有することです。これまで臭いの遮断のみを活かした用途展開がほとんどでしたが、今後は耐熱性と臭いの遮断の両方が求められる用途に展開していくことを目指しています。機能性耐熱袋やフィルムとしてみなさまの生活に欠かせない素材となれば幸いです。
【関連情報】ジュラネックス® PBT製品紹介