取組事例Our Approach
2022
材料を選ばない樹脂異材接合技術「AKI-Lock®」
SDGs(Sustainable Development Goals)対応から市場で部品の軽量化需要が増しており、その手法として異なる樹脂材料同士の接合を求められる場面が増えてきています。しかし二つの素材間には接合界面が存在するため、高い接合力や気密性が必要とされる場合には接合そのものを断念せざるを得ないことも少なくありません。
AKI-Lock® は、溶着でもなく接着でもない斬新な接合技術です。使用できる材料の制約も少なく、従来では困難であった様々な異材の組合せで強固かつ気密性のある接合が可能となりました。これにより、今までにない製品開発の可能性が広がり、新たな価値の創造につながることが期待されます。
ポイント
- 物理アンカーによる接合の為、レーザー処理から接合までの時間に制限がありません。
- 処理したい場所だけに処理できる為、マスキングが不要です。
■AKI-Lock® とは
ガラス繊維強化プラスチックに添加されたガラス繊維(GF)を物理アンカーとして利用した接合技術のことです。下の写真では、成形品の表面をレーザー加工することでガラス繊維が露出状態なっていることが分かります。ここに接合させる樹脂を流し込むことで、高い接合強度を発現します。
レーザー処理後の1次成形品表面のSEM写真
■接合プロセスと効用
接合プロセスでは二重成形による接合方法と、接着剤による接合方法が適しています。二重成形による接合では、強度のみならず、気密性においても有効性が確認されています。
二重成形による接合
1次成形品の接合させたい面に、溝状にレーザー処理を施すことで、樹脂分のみを除去し、GFが露出した溝を形成させます。インサート成形により2次材樹脂をその溝に流し込むことで、GFが物理アンカーとなり強固な接合強度が発現します。
ここで1次材と2次材は溶融混合する必要がありません。そのため異材接合が可能となり、使用する材料の選択肢が大幅に広がります。
接着剤による接合
例えば金属と樹脂を接着剤によって接合する場合、樹脂側接着面にこの処理を施します。二重成形による接合の場合と同様に、接着剤を溝に流し込めればGFが物理アンカーとして機能するため強度を大きく向上させることができます。樹脂と接着剤は接着する必要はなく、相性を考慮する必要もありませんので、接着剤選択の自由度も広がります。
■気密性の発現
二重成形による接合においては、異材間であっても気密性の確保が期待できます。そのメカニズムは、二重成形時に発生する次の3つの効果から成り立っています。
①ガラス繊維間の隙間に樹脂が入って隙間を埋めていく効果
②2次材の流動せん断力による1次材の溝部の変形
高温の樹脂の流動圧によって一次側の樹脂の山の部分が変形して溝を塞ぎ、カシメた形になります。
③2次材の成形収縮による圧着効果
2次材側の樹脂の成型時の収縮によって1次材側に抱き着く力が発生します。
下の図のようにAKI-Lock® で二重成形品を作り、熱衝撃を与えた前後でのヘリウムガス(He)による気密性試験を行いました。その結果、熱衝撃を与えた後も一般的に水中で気泡が発生するレベル(10-5 Pa・㎤/s)をはるかに超える気密性(10-9 ~10-10 Pa・㎤/s)を確認することができました。
気密性試験方法
AKI-Lock® の技術を用いることで1つの部品に異なる特性を複数持たせることが可能となります。
例えば手作業では難しいような複雑形状へのOリング設置も、AKI-Lock® による二重成形を用いることでOリングを成形により固定することができます。そうすることで複雑形状でも確実にシールできるようになります。
また、組付け工数や部品点数の削減やそれらによるコストダウン、接着材レスを始めとしたドライプロセスにより環境負荷低減にも貢献します。
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【関連資料】
◆ 新規二重成形技術 AKI-Lock®